オーディオもその昔はモノラルでスピーカーは真ん中に一台という構図だった。
遡ること数十年。モノラルからステレオへと変わりつつあるときソースのほとんどがモノラルだったのでその音の位相を変えて左右のスピーカーに振り分けた似非ステレオというものが存在していた。
その後4ch、サラウンドとスピーカーの数は多くなった。
しかしディスクリートと言われるようなマイク一本に一台のスピーカーといった構造ではない。一本のマイクのサウンドは何チャンネルかにバランスを考えて振り分けられる。
ところがこの何チャンネルだが7.1chサラウンドだからと言って8つのトラックを持たせているわけではない。後ろの2本のスピーカーは6トラックの中の音から再構築されている。
5.1chの場合も2トラックの音から似非サラウンドとして作られているものもある。
さらにはフロントの2つのスピーカーで5.1ch、6トラックの音をあたかも5方向から聞こえているかのように作られたフロントサラウンドのようなシステムがある。
おそらく一般の人がサラウンドと言って購入する場合その裏側がどうなっているかを深く追求することはない。多くは似非3Dだったりするのだ。
そして今ブームになるかもしれない3D立体テレビ。
こちらも似非3Dが存在する。
3D映像とは2系統のカメラからの映像を一つのスクリーンに投影して人間の左右の目に振り分けて見せるという方式をとっているのだが基本的に2つの映像が必要である。
そのため3D映画などは新たに一から撮影する必要があるのだが既にある2Dの映像を3Dっぽく見せるというデジタル技術がある。
まさに似非3Dなのだが何を持ってこの映像のどの部分が手前で何が奥なのかどうやって判断させているのか?
実はカメラが横に移動している映像は簡単に3D化できる。片方の目用の画像を少し遅らせることで2台のカメラで撮影しているかのように見ることができるのだ。しかしこの被写体が動くものだと時間差が違和感として残ってしまう。
どう考えても完全な3Dになりえないのだがメーカーとしては3Dテレビを売ったけども3Dコンテンツが少ないという現状を打開するためこの似非3Dをけっこう前面に出している。
店頭で切り替えてみる程度ならなんとなく立体感は出て見えるかもしれない。これはモノラル音声の位相を変えて似非ステレオにしている行為とまったく同じである。違和感以外の何物でもない。
そもそも左右の視差で立体的に感じさせる3D映像そのものが似非3Dなのだ。人間の立体を感じるメカニズムはそんなに簡単なものではない。手前にあるものは目の水晶体が収縮してピントを合わせようとする。3D映像では映像が存在しているのは固定した平面である。そのため脳が混乱して長時間観賞していると疲れるという現象が起こる。
さらに人間は眼球を微動したり頭を動かすことで立体を感じることができる。片目だけでもある程度距離を感じ取ることができるのはそのためだ。
ところが3Dのスクリーンに対して頭を動かして見ると映像の見え方がわずかに変化するのだが実際の立体物を見ていて変化する見え方とは全く異なるものである。このことによっても3D酔いは起こる。
こういった問題点はすでに解明されている部分であるため2時間以上もある「アバター」ではかなり立体感を減らして作成しているという。
アトラクションなどの短編映像の場合は驚きを演出するため立体感を強調している。
このように見せる側、見る側に知識がないとかなり際物の映像となってしまうので要注意である